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本当に便秘なの編
毎日お通じがあれば便秘ではなくて、毎日お通じがなければ便秘だと思っている患者さんが多いです。
毎日お通じがあってもコーヒーばかり飲んでいて息まないとでない硬めの便なら便秘です。
2~3日に1回のお通じでもたっぷりと水分補給が出来ていて息まなくてもでるすこし軟らかめの便なら便秘ではありません。
排便回数が少ないのが便秘ではありません。
硬い便でお腹やお尻に負担をかけている状態が便秘です。あなたは本当に便秘なの?
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便秘症と過敏性腸症候群編
便秘の原因はさまざまです。
大腸がんなどが原因の器質性便秘や基礎疾患が原因の症候性便秘や薬剤が原因の薬剤性便秘よりも、水分や食物繊維の不足が原因の食事性便秘の可能性が高いです。
患者さんの年齢層が比較的若いこともあるのでしょうが、わたしの患者さんには弛緩性便秘や直腸性便秘の患者さんは少ない印象です。過敏性症候群は心のストレスや体の疲れなどから自律神経のバランスが乱れた際に大腸の蠕動が亢進する体質です。
ほとんどの患者さんは下痢・腹痛・腹満・腹鳴・残便感などで悩んでいます。
一番難しいのは、過敏性腸症候群の体質に食事性便秘が加わった患者さんの痙攣性便秘です。
極端に水分が不足していると便秘・腹痛・腹満・腹鳴・残便感だけで下痢がないこともあります。
このことから便症の治療のはじめの一歩は必要十分な水分摂取だと考えます。
水分摂取だけで便秘が改善するわけではありませんが水分不足のままでは便秘は改善しませんね。 -
4つの便秘症編
機能性便秘には、食事性便秘・弛緩性便秘・直腸性便秘・痙攣性便秘があります。
食事性便秘は、食物繊維の不足から糞便量が少なくなり排便回数も少なくなり、水分の不足から硬い糞便になる便秘です。
弛緩性便秘は、大腸の蠕動と緊張の低下から糞便の大腸通過時間が遷延し、過度の水分の吸収から硬い糞便になる便秘です。
直腸性便秘は、直腸肛門反射の低下に伴う便意の認知障害から糞便の直腸滞在時間が遷延し、過度の水分の吸収から硬い糞便になる便秘です。
痙攣性便秘は、左側大腸の緊張の亢進に伴う大腸攣縮から糞便の大腸通過時間が遷延し、過度の水分の吸収から硬い糞便になる便秘です。
つまり、いろんな原因で糞便が硬くなるのが便秘症です。大腸がんなどに伴う大腸狭窄などの器質的障害が原因の器質性便秘や全身性疾患や代謝性疾患などが原因の症候性便秘や薬剤の副作用などが原因の薬剤性便秘など、本質的に機能性便秘ではない便秘もあります。これらの評価には、詳しい問診・投薬歴の確認・大腸内視鏡検査などが必須と考えます。
これらが原因の場合には、原疾患の治療や原因薬剤の減薬や休薬も必要です。 -
食事性便秘の治療編
食事性便秘の治療のはじめの一歩は排便頻度に対して必要十分な水分を摂取することです。
患者さんには目安は毎日お通じがある方でも最低1000ml・3日1回のお通じの方なら最低1500mlは摂取してくださいと説明しています。
カフェインを含む飲みものは利尿作用があるため、水分摂取量はカフェインを含まない飲みもの(水・麦茶・スポーツ飲料など)・カフェインを含む飲みもの(緑茶・ほうじ茶など)・たくさんのカフェインを含む飲みもの(コーヒー・紅茶など)で分類して計算してもらっています。「お通じのための水分摂取量=カフェインなし+カフェイン含む×0.5-カフェイン多い」
つまり、白湯1000mlとコーヒー500mlなら水分摂取量500mlって感じです。
また、お仕事やジムやサウナなどでの発汗量に関してはこれとは別にスポーツ飲料で補わないといけません。
食物繊維の摂取や大腸の蠕動運動に問題がなくても、相対的水分不足が原因で便秘の方がたくさんいます。
水分摂取バランスの改善だけで、1日3回~3日1回程度、息まないでもするっと出る排便なら便秘ではありません。
4日1回でも息まないでもするっと出れば安心してください。便秘ではありません。
それでも、排便頻度を改善したい場合は食物繊維を摂取してください。
極端にバランスの悪い食事をしていなければ、現在の食生活はそのままで、オートミール系を毎日60g/日だけ追加してくださいと説明しています。
これでだいたい今までのペースから1日だけ排便頻度が改善すると思います。水分や食物繊維の摂取に問題がなくても水分吸収が良すぎる方には酸化マグネシウムなどの緩下剤が必要です。
また、食物繊維の摂取量にもよりますが、2~3日間排便がなければ頓服での刺激性下剤の服用が必要なこともあります。
いずれにしても、食事性便秘の治療のはじめの一歩は水分バランスの改善です。
水分バランスの改善だけで便秘が改善するわけではありませんが、水分バランスの改善なしに健康な排便習慣の獲得は難しいものと考えます。 -
弛緩性便秘・直腸性便秘の治療編
加齢や刺激性下剤の乱用が原因で動きの悪い弛んだ大腸になって糞便の大腸通過時間が長くなることで糞便が硬くなる便秘が弛緩性便秘です。
食物繊維の摂取不足と相対的な水分摂取不足からの食事性便秘を弛緩性便秘と勘違いしている患者さんがたくさんいます。
いずれにしても、2~3日間排便がなければ刺激性下剤の適応となります。刺激性下剤の乱用が弛緩性便秘の原因となるので刺激性下剤は毎日内服しないでください。
2~3日間排便がなかった時の頓服で反応便が下痢なら食事性便秘の改善が必須です。気を付けてくださいね。加齢や便意の我慢の繰り返しが原因で直腸の感覚が鈍って便意が鈍くなる便秘が直腸性便秘です。
ラムネのビー玉みたいに直腸のコロコロ便などが出しにくい時は炭酸ガス座薬や浣腸の出番です。 -
3つの過敏性腸症候群編
心のストレス・体の疲労・ホルモンの乱れなどに伴う自律神経のバランスの乱れからセロトニン分泌が亢進し、S状結腸・直腸の蠕動が亢進する体質が過敏性腸症候群です。
基本的には蠕動亢進に伴う下痢・しぶり腹(腹痛・腹満・腹鳴・残便感など)が主な症状ですが、極端な蠕動亢進に伴う攣縮からコロコロ便になることもあります。
過敏性腸症候群と食事性便秘がミックスされると腸の動きが良くても便秘・腹満・残便感が主な症状となることもあります。
油っこいものやにんにくなどの刺激物だけでなく、ごぼうなどのしっかりした食物繊維の摂取は極端な蠕動亢進の原因になります。
注意しましょうね。 -
過敏性腸症候群の治療編
わたしの患者さんには、過敏性腸症候群だけの患者さんと過敏性腸症候群&食事性便秘の患者さんがいます。
過敏性腸症候群&食事性便秘の患者さんは、排便ペースに対して充分な水分を摂取することから治療を始めます。
水分摂取の改善後に硬い便がなくなれば、過敏性腸症候群だけの患者さんと一緒ですからね。過敏性腸症候群の患者さんの主な症状は、S状結腸・直腸の過剰な蠕動に伴う残便感・腹鳴・腹満・腹痛などのしぶり腹です。
下痢・しぶり腹ならイリボー、しぶり腹だけなら桂枝加芍薬湯が第1選択となります。
いずれも、過剰な蠕動を抑えるお薬です。桂枝加芍薬湯を飴の粉で薄めた小建中湯も選択肢の1つです。
また、減っているであろうビフィズス菌の補充のためビオフェルミンも加えます。
これらのお薬が効いてしぶり腹が改善した結果、排便ペースがスローダウンした時は水分摂取量を増やさないと硬い便になることもあります
気をつけてくださいね。
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